2025/08/06 米国株市場の現状とトランプ氏の影:バブルか、成長か?

米国株市場の現状とトランプ氏の影:バブルか、成長か?

米国株市場の現状とトランプ氏の影:バブルか、成長か?

PER、PBR、そして次期政権の政策から読み解く未来

米国株はバブルか?PER・PBRで見る市場の体温

現在の米国株市場が「バブル」なのかどうかは、専門家の間でも意見が分かれる大きなテーマです。しかし、株価の割高・割安を判断する代表的な指標であるPER(株価収益率)PBR(株価純資産倍率)は、歴史的な平均と比較して高い水準にあり、市場の過熱感を示唆しています。

PBR (株価純資産倍率) の推移

株価が1株当たりの純資産の何倍かを示すPBRは、2025年時点で約5.0倍と、ITバブル期に迫る歴史的な高水準に達しています。

S&P 500 平均PBR
2021年約4.8倍
2022年約3.8倍
2023年約4.2倍
2024年約4.7倍

PER (株価収益率) の推移

企業の収益力に対して株価が割高かを示すPERは、2025年初頭時点で約25〜26倍。長期平均(約19.4倍)を大きく上回っています。

期間 S&P 500 平均PER
長期平均約19.4倍
ITバブル期30倍超
2024年約25倍

結論:各種指標は歴史的に見て割高な水準を示しており、市場が熱を帯びていることは間違いありません。しかし、これを「バブル」と断定するには、好調な企業業績や金融政策の動向など、他の要因も考慮する必要があります。

どの業界が期待されている?高PERセクターを解剖

株価上昇を牽引しているのは、一部の特定セクターです。特にPERが高い業界は、投資家が「将来の大きな成長」に賭けていることを示しています。現在の利益水準が低くても、将来性が高く評価されているのです。

特にPERが高い業界の例

  • ヘルスケア情報サービス (365倍): 新技術やデータ活用の期待。
  • 旅行サービス (499倍): コロナ後の需要回復と新たなサービスへの期待。
  • 太陽光 (136倍): クリーンエネルギーへのシフトという大きな潮流。
  • ソフトウェア・インフラ (65倍): AIやクラウドの継続的な需要増。
  • 高級品 (145倍): 強力なブランド力と新興国市場の成長期待。

注意点:高いPERは高い期待の裏返しです。その期待が実現しなかった場合、株価が大きく下落するリスクも伴うため、投資判断は慎重に行う必要があります。

最大の不確実性要因:トランプ氏の政策と市場への影響

今後の市場を占う上で最大の変数が、トランプ氏の経済政策です。彼のスタンスは矛盾をはらんでおり、特に代名詞である「関税政策」は世界経済に大きな混乱をもたらす可能性があります。

株高・ドル高・金利高へのスタンス

  • 株高 → 歓迎: 自身の政策の成果として積極的にアピール。抑制策は考えにくい。
  • ドル高・金利高 → 敵視: 米国製造業の競争力を削ぎ、財政を圧迫するため問題視。FRBへの利下げ圧力を強める可能性大。

「トランプ関税」がもたらす未来とは?

「全輸入品に一律10%」「中国製品に60%以上」といった高関税が実行された場合、以下のような連鎖反応が予測されます。

  1. インフレの再燃・加速: 関税コストが製品価格に転嫁され、米国の消費者が負担。物価が上昇します。
  2. 報復関税と貿易戦争: 各国が報復措置を取り、世界的な関税の掛け合いに発展。世界経済が停滞します。
  3. サプライチェーンの大混乱: 企業は高関税を避けるため生産拠点の見直しを迫られ、経済に混乱が生じます。
  4. スタグフレーション懸念: 物価高(インフレ)と景気後退が同時に起こる最悪のシナリオも懸念されます。

まとめ:視界不良の中での航海

現在の米国株市場は、「好調な企業業績」「歴史的な割高感」が同居する複雑な状況にあります。AI革命などへの期待が一部セクターの株価を押し上げる一方で、その熱狂は常に危うさをはらんでいます。

そして、最大の不確実性要因であるトランプ氏の政策は、その自己矛盾した性質から、市場をどちらの方向にも大きく揺さぶる可能性があります。投資家は、この視界不良の海を航海していることを強く認識し、指標の注視とリスク管理を徹底することが、これまで以上に求められる局面と言えるでしょう。

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